SGRAニュース

第2回アジア未来会議報告

2014年8月22日(金)~8月24日(日)、インドネシアのバリ島にて、第2回アジア未来会議が、17か国から380名の登録参加者を得て開催されました。総合テーマは「多様性と調和」。このテーマのもと、自然科学、社会科学、人文科学各分野のフォーラムが開催され、また、多くの研究論文の発表が行われ、国際的かつ学際的な議論が繰り広げられました。

 

アジア未来会議は、日本留学経験者や日本に関心のある若手・中堅の研究者が一堂に集まり、アジアの未来について語り合う場を提供することを目的としています。

 

8月22日(金)、バリ島サヌールのイナ・グランド・バリ・ビーチホテルの大会議場の前室には、午後のフォーラムで講演する戸津正勝先生(国士舘大学名誉教授)のコレクションから70点のバティック(インドネシアの伝統的なろうけつ染)、島田文雄先生(東京藝術大学)他による20点の染付陶器、そしてバロン(バリ島獅子舞の獅子)が展示され、会場が彩られました。

 

午前10時、開会式は4人の女性ダンサーによる華やかなバリの歓迎の踊りで始まり、明石康大会会長の開会宣言の後、バリ州副知事から歓迎の挨拶、鹿取克章在インドネシア日本大使から祝辞をいただきました。

 

引き続き、午前11時から、シンガポールのビラハリ・コーシカン無任所大使(元シンガポール外務次官)による「多様性と調和:グローバル構造変革期のASEANと東アジア」という基調講演がありました。「世界は大きな転換期を経験している。近代の国際システムは西欧によって形作られたが、この時代は終わろうとしている。誰にも未来は分らないし、何が西欧が支配したシステムに取って代わるのか分からない。」と始まった講演は、ほとんどがアジアの国からの参加者にとって大変示唆に富むものでした。

 

基調講演の後、奈良県宇陀郡曽爾村から招待した獅子舞の小演目が披露されました。その後、参加者はビーチを見渡すテラスで昼食をとり、午後2時から、招待講師による3つのフォーラムが開催されました。

 

社会科学フォーラム「中国台頭時代の東アジアの新秩序」では、中国、日本、台湾、韓国、フィリピン、ベトナム、タイ、インドネシアの研究者が、中国の台頭がそれぞれの国にどのように影響を及ぼしているか発表し、活発な議論を呼び起こしました。

 

人文科学フォーラム「アジアを繋ぐアート」では、日本の獅子舞とバリ島のバロンダンス、日本と中国を中心とした東アジアの陶磁器の技術、そしてインドネシアの服飾(バティック)を題材に、アジアに共通する基層文化とその現代的意義を考察しました。

 

自然科学フォーラム「環境リモートセンシング」は、第2回リモートセンシング用マイクロ衛星学会(SOMIRES 20)と同時開催で、アメリカ、インドネシア、マレーシア、台湾、韓国、日本からの研究者による報告が行われました。
フォーラムの講演一覧

 

午後6時からビーチに続くホテルの庭で開催された歓迎パーティーでは、夕食の後、今回の目玉イベントである日本の獅子舞とバリ島のバロンダンスの画期的な競演が実現し、400名の参加者を魅了しました。

 

8月23日(土)、参加者は全員、ウダヤナ大学に移動し、41の分科会セッションに分かれて178本の論文が発表されました。アジア未来会議は国際的かつ学際的なアプローチを目指しているので、各セッションは、発表者が投稿時に選んだサブテーマに基づいて調整され、必ずしも専門分野の集まりではありません。学術学会とは違った、多角的かつ活発な議論が展開されました。

 

各セッションでは、2名の座長の推薦により優秀発表賞が選ばれました。
優秀発表賞受賞者リスト

 

また、11本のポスターが掲示され、AFC学術委員会により3本の優秀ポスター賞が決定しました。
優秀ポスター賞の受賞者リスト

 

さらに、アジア未来会議では投稿された各分野の学術論文の中から優秀論文を選考して表彰します。優秀論文の審査・選考は会議開催に先立って行われ、2014年2月28日までに投稿された71本のフルペーパーが、延べ42名の審査員によって審査されました。査読者は、(1)論文のテーマが会議のテーマ「多様性と調和」と合っているか、(2)論旨に説得力があるか、(3) 従来の説の受け売りではなく、独自の新しいものがあるか、(4) 学際的かつ国際的なアプローチがあるか、という基準に基づき、9~10本の査読論文から2本を推薦しました。集計の結果、2人以上の審査員から推薦を受けた18本を優秀論文と決定しました。
優秀論文リスト

 

41分科会セッションと並行して、3つの特別セッションが開催されました。

 

円卓会議「これからの日本研究:東アジア学術共同体の夢に向かって」は、東京倶楽部の助成を受けて中国を中心に台湾や韓国の日本研究者を招待し、各国における日本研究の現状を確認した後、これから日本研究をどのように進めるべきかを検討しました。

 

CFHRSセミナー「ダイナミックな東アジアの未来のための韓国の先導的役割」は、韓国未来人力研究院が主催し、講義と学部生による研究発表が行われました。

 

SGRAカフェ「フクシマとその後:人災からの教訓」では、SGRAスタディツアーの参加者が撮影した写真展示及びドキュメンタリフィルムの上映と、談話セッションを行いました。

 

午後5時半にセッションが終了すると、参加者は全員バスでレストラン「香港ガーデン」に移動し、フェアウェルパーティーが開催されました。今西淳子AFC実行委員長の会議報告のあと、ケトゥ・スアスティカ ウダヤナ大学長による乾杯、2名の日本人舞踏家によるジャワのダンス、優秀賞の授賞式が行われました。授賞式では、優秀論文の著者18名が壇上に上がり、明石康大会委員長から賞状が授与されました。優秀発表賞41名と、優秀ポスター賞3名には、渥美伊都子渥美財団理事長が賞状を授与しました。最後に、北九州市立大学の漆原朗子副学長より、第3回アジア未来会議の発表がありました。

 

8月24日(日)参加者は、それぞれ、世界文化遺産ジャティルイの棚田観光、ウブドでの観光と買い物、ウルワツ寺院でのケチャックダンスとシーフードディナー、などを楽しみました。

 

第2 回アジア未来会議「多様性と調和」は、渥美国際交流財団(関口グローバル研究会(SGRA))主催、ウダヤナ大学(Post Graduate Program)共催で、文部科学省、在インドネシア日本大使館、東アジアASEAN経済研究センター(ERIA)の後援、韓国未来人力研究院、世界平和研究所、JAFSA、Global Voices from Japanの協力、国際交流基金アジアセンター、東芝国際交流財団、東京倶楽部からの助成、ガルーダ・インドネシア航空、東京海上インドネシア、インドネシア三菱商事、Airmas Asri、Hermitage、Taiyo Sinar、ISS、Securindo Packatama、大和証券、中外製薬、コクヨ、伊藤園、鹿島建設からの協賛をいただきました。とりわけ、鹿島現地法人のみなさんからは全面的なサポートをいただき、華やかな会議にすることができました。

 

運営にあたっては、元渥美奨学生を中心に実行委員会、学術委員会が組織され、SGRA運営委員も加わって、フォーラムの企画から、ホームページの維持管理、優秀賞の選考、当日の受付まであらゆる業務をお手伝いいただきました。また、招待講師を含む延べ82名の方に多様性に富んだセッションの座長をご快諾いただきました。

 

400名を超える参加者のみなさん、開催のためにご支援くださったみなさん、さまざまな面でボランティアでご協力くださったみなさんのおかげで、第2回アジア未来会議を成功裡に実施することができましたことを、心より感謝申し上げます。

 

アジア未来会議は2013年から始めた新しいプロジェクトで、10年間で5回の開催をめざしています。第3回アジア未来会議は、2016年9月29日から10月3日まで、北九州市で開催します。

 

皆様のご支援、ご協力、そして何よりもご参加をお待ちしています。

 

<関連資料>

 

第2回アジア未来会議写真

 

第2回アジア未来会議新聞記事(ジャカルタ新聞)

 

第2回アジア未来会議和文報告書(写真付き)

 

Asia Future Conference #2 Report (in English) with photos

 

第3回アジア未来会議チラシ

 

(文責:SGRA代表 今西淳子)